3人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
「お前は強いな」
警察官の言葉に思わず私は、鼻で笑った。
「いい加減な事言わないでくれます」
強情に振る舞ったが、その表情は切なさを訴えていた。
「ならとことん絶望して、部屋に閉じこまって一生を終えればいいさ」
警察官は明かに酷い内容をぶつけてきた。遺族に言ってはならないような言動だった。私は意外な発言に反論出来ずに固まった。
「君にはまだ明日がある。明日がある限り、絶望もあるけど、希望だってある。世の中ってのは分からないものさ」
彼の言葉一つ一つには愛情がこもっていた。なにかを必死に訴えている姿に私は圧倒された。彼は続けて言った。
「世界は広い。ここが嫌なら世界へ行け。きっと必要としてくれる仲間がいる」
私は裁判所にも関わらず大声で泣いた。
しかし、それは絶望の涙ではなく、悔しさの入り交じった涙だった。
最初のコメントを投稿しよう!