転地

11/22
167人が本棚に入れています
本棚に追加
/329ページ
深夜にも関わらず、得体のしれない俺の話を、神妙に噛み砕くように理解しようとする天璋院さま 重い話から雰囲気を変え、雑談に切り替えると、瞳を爛々とさせて楽しそうに質問が止まらない 俺はというと、無事にたどり着いた安堵感と、話を聞いてもらえた達成感に加え、東京での銃撃戦と初体験のタイムスリップ… さすがに眠くて…失礼と思いながらも欠伸を連発してしまう 幾島さんが気を利かせてくれ 『そろそろお休みにならねば、お身体に触ります』 と、天璋院さまに進言してくれた 言葉の意図を察知していただけたようで、名残惜しそうで、しぶしぶながらも 『今日はもう休まれよ、明日また話をきかせてたもれ』 と云ってくれた やっと休める…と胸をなで下ろし 痺れた足をさすりながら下がろうとすると 『そなた、今宵はどこで過ごされるおつもりか?』 幾島さんが首を傾げて疑問を投げかけてくる 公家の従者だっただけあり、品のあるまったりとした口調 年上の女性に対して失礼かもしれないが、可愛いと思ってしまう
/329ページ

最初のコメントを投稿しよう!