転地

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ポカンとする天璋院さまと俺を尻目に 『私のような老いぼれであれば、不埒な考えも及びませんでしょうし、この者が狼藉を働けば、私が刺し違えても、いいや!私でなければ!』 ひとり盛り上がっておられる幾島さん… 自分で自分に言い聞かせて高揚していくさまは、おぼろげな記憶にある少し天然な俺のオカンに似ている 年齢的には幾島さんの方がだいぶ若いと思うのだが、俺がオカンと死別したのは10歳のとき ちょうど面影がオカンと重なってしまった 平均寿命が50歳ソコソコのこの時代、孫がいても不思議ではない年齢の幾島さん、天璋院さまの従者から大奥総取締まで精力的に激務をこなす パワフルで、まさに江戸城のオカンなのだ 『わかったわかった(^_^;) では幾島、ソナタの部屋で休ませるがよい では、薫どの(^_-)-☆』 あとは任せた!と云わんばかりに、天璋院さまは俺に向かいウインク(^_^;) 巻き込まれては大変とそそくさと部屋を後にされた この時代にウインクなんてものはあるはずがないから、俺の見間違えなんだろうが、あの悪戯っ子のような笑顔は、現代のアイドル顔負け、反則である 『では、部屋に参ろう』 幾島さんに促され、別室へむかう
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