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「というわけで、新聞部に突撃だああ!」
オォォォォ、と全員で声を合わせて、入藤を先頭に部室を飛び出して行った――とき、ふいに美須賀が「ちょっと」と呼び止めた。
「なんだ部長?」
戻ってきた入藤が問いかける。
「殴りこみは危険だということに気が付いた」
「なぜ? 相手は貧弱な文化部だぞ? しかも今年の新聞部は人数が少ないし、女子しかいない。パソコン部の方が有利だろう。部長代理もあるし」
入藤の言葉に、美須賀は首を横に振る。
「新聞部部長の彼氏は、柔道部の主将だ」
「なん……だと……?」
「さらに、副部長の彼氏はレスリング部。平部員の一人はボクシング部員と付き合っている」
淡々と話す美須賀。入藤はその場に膝から崩れ落ちた。
「そして、顧問教師の実家はパン屋さんだ」
「パン屋さん……?」
遠本が神妙な声を発した。嫌な想像が彼女の頭をめぐった。
「それでは、トングや包丁、下手すりゃ焼きたてのパンを投げつけられて熱いかもしれないわね」
「熱いのはいやああ!」
遠本の話に、深川は恐怖して叫んだ。
「肉弾戦は無理だよ……。どうする?」
名城は入藤を見た。
どうしたらいいんだ。入藤は考えた。
そうして、ようやくひとつの考えにいたった。
「魔法だ」
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