序章 始まりは歴史から紡がれる

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       * 「――――っつーわけだ。ここ、テストに出んぞー」 授業中だと言うのに、気だるい声が教室に響く。 烏丸快人(からすまかいと)と呼ばれる少年は、シャーペンを回しながらそれを訊いていた。 茶髪でファッション雑誌を参考にしたようにも見えるナチュラルな髪型からは、今時の学生らしさが垣間見える。 今は『魔法史』――魔法の成り立った経緯やそれによる過去の事件を学ぶ、言わば歴史の授業――の時間なのだが、気持ちは次の昼休みに向いている。 (つっても、今日は文化祭の準備で、午前中で終わるんだけどな) 高校における一大イベント『桜夏祭』は、およそ1ヶ月後の10月に行われる。 1年生は舞台で劇をすることが決定しており、それの準備をしておけとの配慮だ。 しかし、実態はただの『短くてラッキーな期間』であり、教師陣も『期日までに終わるならどーでも良いよ』とぞんざいだ。 烏丸のクラスも類に漏れず、本格的な準備は5日後からと話し合いで決まっている。 (でも、まぁ、アレだよな。何か後から時間に追われそうな匂いがするよなあ……) 妙にやる気のあるクラスでは、すでに準備に取りかかっている所もあるとか。  
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