ある魔導士の記憶

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*  昔むかし、遠い昔。  ある城に、ある忠義者の魔導士が仕えていた。  その魔導士はいつも国の為になる事を考えており、ふと、このような妙案を思いついた。  自分の記憶を素質ある子孫に継がせれば、自分より優れた魔法使いになるのではないか、と。  何分、自分のあらゆる魔術の記憶が継がれるのだから、記憶を継いだ子は記憶にない新しい魔術を身に付ければいい。  そして、その記憶をまたその子孫に継がせれば…更に優れた魔法使いが生まれる。  そうして続けていく事で、その子たちが代々魔導士としてこの国に仕えれば、英知の人材として、この国に繁栄をもたらす事ができる。  しかし、素質あればどの子でもいい訳ではない。この国に忠義を尽くせる者でなくてはならない。  何か誤りが起きたなら、すぐ処理できるように、継ぐ者は一人でなくてはならない。  もしいずれ、継いだ者が子を残さず死んだならば、その子までの過去の魔法使いの子孫に継がせよう。  そんな考えで、完成された魔術により、記憶を継いだ子孫は、忠義者の宮廷魔導士として代々仕え、重用された。  これから少し話すのは、その記憶を継いだ、とある魔導士たちの話である。 *
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