ある魔導士の記憶

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 昔、この国に、ある優秀な魔術師がいた。  その魔術師は、仕える国の姫に、恋をしていた。  姫は病弱で、部屋で臥せってばかり。  そのような彼女にも、生まれながらに婚約者という者があり、そして、魔術師は自分の身分をわきまえていた。  魔術師は生涯、けして自分の想いを誰かに打ち明ける事はしなかった。  彼女は病で嫁ぐ前に亡くなったので、非常に短い間だったが、ただの彼女の友として、忠実な臣下として、傍にあり続け、彼女の病を癒すべく研究をし続けた。  そして、彼女が亡くなっても、魔術師は一心に、その生涯を閉じるまで、病や治癒についての研究をやめなかった。  そんな魔術師には、たった一つだけ、大事な彼女との約束があった。  それは 『次にお会いした時は、  必ず幼い頃より生涯をかけて、  あなたの一番の友でありましょう』  
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