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そしてそれから時は流れ、ある魔女は、この国の何代も前の国王の、幼い頃からの一番の友だった。
魔女と、兄弟のないその国王は、姉弟、あるいは兄妹のように仲が良く、互いの恋の話を軽口のように打ち明けれる程だった。
王子だった頃の彼の初恋は、身分の劣る村娘。しかし彼には、国交の改善の為に、他国の姫で性悪な婚約者があった。
魔女は、立場をわきまえ悩む彼の背を『性悪によい国の王妃は務まらない』と言って押した。
しかし、彼が想いを告げるその日、村娘から、ある身分ある相手と結婚すると幸せそうに告げられる。それは、国交も深い隣国の王子の元だった。
その王子が人格者である事を知っていた彼は、彼なら幸せになれるだろう、自分はただの横恋慕だからと、ただ村娘の結婚を心から祝福した。
彼は想いを告げる事なく失恋したが、けして悪い事ではなかった。
少なくとも、その時魔女はそう思った。
というのも、村娘への彼の恋心を悟っていた婚約者は、彼が初恋に悩む間、己の性根を入れ換える努力をしていたのだ。
彼が彼女ひとりを見て、少しずつ愛するよう努力する事を決意し結婚した頃には、見違えたように優しい姫になっていた。
彼女のその熱意と努力、彼女が抱える孤独や不安を悟って惹かれていった彼は、彼女と子供を儲け国王となり、よい政治と幸せな暮らしを築いた。
しかし、彼女の嫉妬心は直らなかったらしく、友である魔女や、もう気持ちもないただの思い出の元村娘と社交界で会うだけでも、彼女は嫉妬に狂うようになった。
どんなに彼が、彼女への心からの愛を囁こうと、その嫉妬心は和らぐどころか、激しくなるばかりで、国政にも悪影響が出てくるようになった。
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