ひとみの過去

22/37
前へ
/2447ページ
次へ
その後、春人と電車に乗った。 行き先はどこでもいい。 私の横にちょこんと座り、箱から出した新幹線を眺めている春人。 新幹線は玩具とはいえ、リュックには入らない程、大きかった。 『新幹線は、この電車より速いかな?』 春人が私に尋ねる。 こんなに生き生きして楽しそうな彼は初めてだ。 『そうね、新幹線だからこの電車より速いわね』 笑顔で答える私。 でも 頭の中は死体処理の事でいっぱいだった。 まずは切断するノコギリを購入しなければならない。 そして、作業をしている間、春人をどこに預けるかだ。 知り合いに預けるのは、後々に足がつく可能性があるので不味い。 それに、できるだけこちらの身元の解らない場所に預けたいのだが……。 果たして、そんな都合の良い場所があるかどうか? 『うわあ~!!きれい!!』 ふいに春人に『見て見て』と促され窓の外に顔を向ける。 すると、大きな川を挟んだ向こう側に、淡いピンク色の線が見えた。 『あれは、桜並木ね』 私は、タイミング良く聞こえた車内アナウンスと共に、春人の手を取り立ち上がる。 『ハル、あそこに行って、お花見しようか!』
/2447ページ

最初のコメントを投稿しよう!

499人が本棚に入れています
本棚に追加