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その後、春人と電車に乗った。
行き先はどこでもいい。
私の横にちょこんと座り、箱から出した新幹線を眺めている春人。
新幹線は玩具とはいえ、リュックには入らない程、大きかった。
『新幹線は、この電車より速いかな?』
春人が私に尋ねる。
こんなに生き生きして楽しそうな彼は初めてだ。
『そうね、新幹線だからこの電車より速いわね』
笑顔で答える私。
でも
頭の中は死体処理の事でいっぱいだった。
まずは切断するノコギリを購入しなければならない。
そして、作業をしている間、春人をどこに預けるかだ。
知り合いに預けるのは、後々に足がつく可能性があるので不味い。
それに、できるだけこちらの身元の解らない場所に預けたいのだが……。
果たして、そんな都合の良い場所があるかどうか?
『うわあ~!!きれい!!』
ふいに春人に『見て見て』と促され窓の外に顔を向ける。
すると、大きな川を挟んだ向こう側に、淡いピンク色の線が見えた。
『あれは、桜並木ね』
私は、タイミング良く聞こえた車内アナウンスと共に、春人の手を取り立ち上がる。
『ハル、あそこに行って、お花見しようか!』
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