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━━新宿駅、東口改札前。
東口と言われただけだが、ここでいいのだろうか?
理香子は周囲に必要以上に目を配りながら、そんなことを考える。
この東口改札は、彼女自身かつて何回も通り抜けた場所だった。
次々と目まぐるしく行き交う人々。
「相変わらずだな……」
理香子は、ハンカチで額の汗を拭いながら呟く。
その時、手の中の携帯が振動した。
非通知。桜井だ。
「今、奥さんを確認した。
今日の服装は、淡いブルーのキャミに白いシルクのショール。膝丈のタイトスカートは、ん? クリーム色か?相変わらずスタイルがいいな、それに中々の美人だ」
桜井の言葉に思わず頬を赤らめた理香子は、俯き加減で尋ねた。
「で、私はどうすればいいの?」
「まず、地上に出ろ。
そしてアルタ前の交差点を渡って歌舞伎町方面に歩け。すれ違う1分ほど前になったら電話する」
桜井はそう言い残すと、通話を切った。
━━歌舞伎町。
昔働いていたキャバクラがある場所だ。
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