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階段を上がり外に出ると、アスファルトが揺らぐような熱気が身体にまとわりつく。
構内も暑いと思ったが、やはり外の方が直接的な残暑は厳しい。
この路面に五年前は、激しい雨が降っていたなと思い出す。
俊介と初めて出逢ったのもこの場所だった。
アルタ前交差点には、すでに沢山の人だかりが出来ている。
信号が青になると、一斉にその固まりが交差を始めた。
理香子も、その集団の一人だ。
桜井は今、どこから私を見ているのだろう?
彼もこの交差点を渡っているの?
彼女は前後に視界を振りながら、立ち止まっては歩く。その動作を繰り返した。
ダメだ。
周囲が気になって思うように前に進めない。
後方から理香子を次々に抜かして行く人々が、『邪魔だ!』と言わんばかりに彼女の肩に強くぶつかり、その度よろけて転倒しそうになる。
その時、ふいに携帯が振動を繰り返す。
理香子は慌てて通話を選択した。
「ほらほら、よそ見をしてると転ぶぞ!ちゃんと前を見て歩け」
桜井……。
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