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彼女の視界に、まず最初に飛び込んだ光景。
それは、うつ伏せに倒れているパンダだった。
でもそれは一瞬のことで、次々とパンダを囲むように人の壁が出来あがってゆく。
パンダは、少し離れた場所から見ている理香子の視界から完全に姿を消した。
それと同時に、次々に誰かの叫び声が聞こえる。
「おい!誰か救急車を呼んでくれっ!!」
「脱がせ!!」
「きゃあーッ!口から泡吹いてる!!」
子供の泣き声。
「パンダさん、死んじゃったあーーッ!!」
騒然とする現場。
「こんなに暑い時に着ぐるみなんて自殺行為だ」
電話の向こうから聞こえた桜井の声。
呆然としていた彼女だったが、その声でハッと我に返った。
今の台詞、彼はあの人混みの近くにいる。
それに、次々と聞こえてくるこの声……。
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