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その後、彼の言葉に甘えて、当時バイトをしていたキャバクラの前まで送って貰った。
俊介は店の目映い看板に目を細める。
『ここで働いてるの?』
『ええ、寄っていきます?お礼にサービスしますよ』
『いや、自分はこうゆう所は苦手で……』
『そうですか……わざわざ送って頂いたのに、お礼も出来ないなんて……』
『いや、いいんだ。じゃあ僕は行くよ』
背を向けて歩き出す俊介。
理香子はその背中を見送っていたが、突然何かを思い付き彼を呼び止めた。
俊介が不思議そうに振り返る。
『あの、私昼間は市ヶ谷の花屋で働いてるんです』
『市ヶ谷の花屋?』
『はい、市ヶ谷駅前の花屋です。
今度、もし暇があったらでいいんですが、日曜日もやってますから来て下さいませんか?』
『君の仕事場に、なぜ?』
『花を……今日のお礼に花をプレゼントさせて欲しいんです』
『花、僕に?』
『はい、あの……ごめんなさい。
私バカだから、こんな事しか思い浮かばなくて……』
まともに目を合わせる事が急に恥ずかしくなり、理香子は俯いてしまう。
俊介は、そんな彼女を見てニコリと笑った。
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