接点━2

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男と理香子の目線が重なり合う。 男は携帯を耳に当てたまま、彼女を見下ろした。 黒緑眼鏡の奥から細い糸のような目が、少しだけ開かれたような気がする。 理香子が男に尋ねた。 「貴方、桜井さんでしょ?」 「えっ?」 困惑した表情を浮かべる男。 彼女は勝負を決める為に、更に強い口調で詰め寄る。 「答えなさいよ!貴方が桜井でしょっ!?」 その時 「アハハハッ!!」 携帯から、思わず耳を塞ぎたくなるような大きな笑い声が聞こえた。 「えっ!?」 彼女は携帯を耳から遠ざけて、男を見上げる。 男は依然として無言で自分を眺めていた。 次に困惑したのは彼女の方だ。 恐る恐る、もう一度携帯を耳に当ててみる。 「ククク……」 さっきの爆笑とは違って、今度は圧し殺したような笑い声。 間違いない。 これは桜井の声だ。 だが、目の前の男は笑っていない。 携帯を耳に当ててはいるものの、一言の声も発してはいないのだ。 「……あの」 戸惑うように、やっと男の口から声が発せられる。
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