499人が本棚に入れています
本棚に追加
違う!
この人は桜井じゃない!!
そう悟った瞬間、彼女の顔は直射日光を真正面から当てたように真っ赤になった。
「人違いしました。すっ、すいませんっ!!』
慌てて男に頭を下げ、逃げるようにその場を立ち去る理香子。
携帯からなのか、反対側なのか、どちら側か判断はつかないが、彼女の耳に聞こえるサイレンの音。
誰かが救急車を呼んだのだろう。
後、何分後かに、倒れた青年はタンカーに乗せられて病院に搬送される……。
今になって、初めて青年の安否を気にしている自分がいて
そのことが……今更ながら、酷く薄情に思えた。
……情けない。
おまけに恥までかかされて!!
理香子の胸に飛来するのは、人違いをした落胆では無く、桜井に対する沸々とした怒りだった。
「チェックメイトじゃなくて残念だったなあ~」
からかうような桜井の声。
彼女は悔しさのあまり唇を噛み締めた。
「貴方、人が恥をかいたことがそんなに可笑しい!?」
「その質問には前にも答えただろう?ああ……最高に面白い!」
最低!!
「貴方、性格が最悪だわっ!」
「そうでもないぜ!あんたにちゃんと情けをかけて、チャンスを与えただろう?」
最初のコメントを投稿しよう!