接点━2

15/34
前へ
/2447ページ
次へ
チャンス そう……。確かに、桜井は私にお金を取り戻せるチャンスを三回くれた。 そして今日が二回目。 だけど、本当にこんな人込みの中で、顔も知らない桜井を探すことが出来るのだろうか? ――コマ劇場前。 足を止めて回りを見渡す彼女。 どこに視界を振っても、人、人、人。 平日なのに 昼間なのに どこからか湧き出て来る蟻の大群の如く、人間は沢山いる。 そして、こうして立っているだけでも、その無数の蟻達は自分の横を通り過ぎて行くのだ。 その時、桜井の声が聞こえた。 「さあ、そろそろすれ違うぞ。ちなみに俺はグレーのシャツを着ている。見付けられるかな?」 通話が切られる。 「…………」 携帯を静かに閉じる理香子。 今は余計なことを考えてる暇はない。 この人波の向こうから、奴は確実にやって来るのだ。 彼女はじっと前方に目を凝らす。 桜井は今、一つのヒントをくれた。 グレーのシャツ。 Tシャツ? ワイシャツ? それとも……? 考え込んでいる隙に、グレーっぽいTシャツを着た男が横を通過してゆく。
/2447ページ

最初のコメントを投稿しよう!

499人が本棚に入れています
本棚に追加