接点━2

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フラつく足取りでコマ劇場前の段差に腰を降ろした理香子は、そのまま両手で頭を抱え込んだ。 なぜ? どうして? なんで桜井は見付からないの!? 心が悲鳴をあげた。 今にも零れ落ちそうな涙を拭い、垂れ下がった前髪をかきあげながら、もう一度、周囲を見渡してみる。 すると、道行く男性、全てがグレーのシャツを着ているように見えた。 全部の人間が桜井で、こちらを向いてあざ笑っているように思える。 その時、手のひらに振動を感じ、彼女は携帯を開いた。 ――非通知表示。桜井からだ。 理香子は力無く通話を押して携帯を耳に当てた。 予想通り……人を小バカにしたようなテノールが聞こえる。 「やあ奥さん。必死に探したのに残念だったな」 「桜井さん、貴方……人をバカにするのにも程があるわ」 「は?なんのことだ?」 「『なんのことだ?』じゃないわ!貴方、本当に私とすれ違った!?」 「ああ、ちゃんとすれ違ってやったぜ」
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