接点━2

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「それは嘘よ」 「嘘?」 「だって私はあの後、自分とすれ違ったグレーのシャツの男、全てに声を掛けたのよ。 本当にすれ違っていたら貴方と逢っていたはずだわ」 「全て?全てねぇ~」 にわかに笑いを含んだような桜井の声。 彼女は眉を潜める。 「何よ?」 「いや、あんたが声を掛けてる隙に、何人グレーのシャツを着た男が通り過ぎたかなと思ってね」 理香子は思わず立ち上がった。 「そんなはずないわ!私は確かに……」 「確かに?」 桜井の問いかけに、彼女の口は、そこから先の言葉を失ってしまう。 本当に全てに声を掛けたのか、急に自信が無くなってしまったのだ。 「奥さん、基本的にあんたはトロイ。そんなんじゃ俺を見つけるのは無理だ」 瞬間、彼女の喉がグッと鳴った。 ――そんなこと そんなこと、言われなくても解ってる! だけど……だけどね! 「それでも、どうしてもお金を取り戻さないといけないのよ、私はっ!!」 理香子の突然の大声に、周囲の人間が振り返る。
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