テノール

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――だが、この結婚には大きな障害があった。 彼の家は、代々続く由緒正しい京都の呉服屋で、俊介の兄の代になってからも飛躍的に事業を拡大する財産家。 俊介自身も、東京地検特捜部に配属される将来有望なエリート検事である。 一方理香子は、まだ幼い頃に親に捨てられ、施設で育だった孤児であった。 しかも高卒で、キャバクラはやめたものの、小さな花屋で働いている。 この格差の違いは絶大だ。 俊介の両親は、勿論この結婚に肩を奮わせて猛反対した。 だが、彼はガンとして意思を曲げる事なく、彼女を妻にしたのだった。 未だ反対する義両親の影に怯えながらも、理香子は愛する俊介との幸せを掴んだ。 ━━━━━━━━━ 彼女は瞳を閉じる。 ――そう、私は幸せ者。 主人には感謝している。 その時 「理香子!!」 突然、大きな声を張り上げて俊介がベッドから立ち上がった。
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