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翌日、何事も無かったかのように俊介を送り出した理香子は、大きな袋を抱えてゴミステーションへと向かった。
可燃指定袋を降ろすと同時に、ポンポンと肩を叩かれ振り返る。
背後には近所の主婦、横溝昌枝(三十六歳)の姿があった。
似合うか似合わないかは別として、ファッション雑誌のモデルに憧れたベリーショート。
奥二重の瞳と低い鼻が彼女のチャームポイントだ。
小花模様のエプロンが良く似合う昌枝は、理香子が唯一気さくに話せる主婦仲間。
彼女は、理香子の顔を見て目を見張った。
「その眼帯どうしたの?口の横も切れて青くなってるじゃない!!」
「ええ、ちょっと階段で足を滑らせたの」
「また?この前も同じ事言ってたでしょ?」
「おっちょこちょいだから私……」
力なく微笑する理香子。
昌枝は肩で息をついた。
「まあ……深くは聞かないけど、何かあるなら相談してね。
理香子さんは、あたしと違ってまだ若いし、人生やり直しだってできるのよ」
意味深な彼女の言葉に理香子は眉を潜める。
「何を言ってるの?私なんて今年でもう三十歳よ。
昌枝さんと六歳しか変わらないじゃない」
「うぅーっ」と唸るような声をあげ、昌枝は首を横に振る。
「解ってないわねぇ~、その六歳が大きいのよ。
所でさっき見かけたけど、お宅のご主人って何歳?」
「主人は私より六歳上だけど……」
「まあ、じゃあ私と同じ年って事!?失礼だけど、もっと年上かと思ってたわ」
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