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――夜も深まる23時、村上家の門をくぐり、一台の車がバックで車庫に納められる。
車から降りたのはスーツ姿で低身の男。
彼が玄関前に立つと、大きな両開きの扉が開いた。
「あなた、お帰りなさい」
満面の笑みで迎える理香子。
「ああ……」
ネクタイを緩めながら彼女の夫、村上俊介(三十六歳)は、理香子に黒いアタッシュケースを渡す。
彼は大理石の長い廊下を足早に歩き、リビングへと向かった。
その後から、いそいそと追いかける理香子。
「あなた、夕食の用意を整えてありますけど……」
「今日はいい、外で済ませて来たから。それより風呂に入る」
「あっ、はい準備してあります」
彼女は俊介を追い抜かし、急いでバスルームへと向かう。
壁に汚れはないか?
シャンプー、リンス、ボディーソープの位置は正しいか、最終チェックをする為にである。
やがて俊介が風呂に入ると、頃合いを見計らって理香子は浴室の扉を開いた。
「あなた、お背中流します」
「ああ」
ザバッと多量の水滴を垂らし湯船からあがると、彼は背中を向けて座る。
白い泡を背中いっぱいに広げ、理香子は丹念に俊介の背中を洗い流した。
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