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「いってらっしゃい。」
「いってきます。」
いつもの挨拶をかわして家を出る。
マンションをでて、駅に向かって歩きながら俺はため息をついた。
ハルは申し分ないほど良くできた同居人だ。
だけど、最近その行動や言動に小さな違和感を感じる。
あまりにも完璧なのだ。
始めのうちはそういう性格なんだと思っていた。
今だって最初と変わったところはない。
むしろ距離感も少しずつ縮まって、いい関係を気づけていると思う。
でも、どうしても正体のわからない小さな違和感が拭いきれない。
たぶんあの日……初めて会った日に見たあの表情のせい。
鋭利な光をたたえた瞳が射抜くようにこちらを見つめていた。
肉食獣が獲物に狙いを定めるかのような……。
今のハルからは想像できない表情。
優しいハルを好ましく思う気持ちとあの表情をもう一度見たいと思う気持ちがせめぎあう。
それが余計にハルへの感情の正体をわからなくしている。
俺はもう何度目かわからないため息をはきだした。
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