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それからよく、ハルが仕事をする姿を見かけるようになった。
パソコンにむかっていたり、誰かと電話で話してたり……。
そこには俺の知らないハルがいて、チクリと胸が痛んだ。
そして、そんなハルの姿を見るたびに初めは小さかった違和感がむくむくと増大していく。
いま俺が知ってる「ハル」は本当のハルなんだろうか。
そんな思いが頭をもたげる。
けれど、そんな思いとは裏腹にハルを思う気持ちは募って……。
苦しくて身動きできない感情が心を支配する。
あぁ、そうか。
俺はハルを好きなのか。
不意にそういう結論にいたった。
いや、本当ははじめからわかっていた。
一目見たときから始まっていた気持ち。
なぜと聞かれたらこまるけど、確かに俺はハルが好きだ。
わかっていた、だからこそ悩んで気づかないふりをしていたのかもしれない。
ハルの態度に感じた小さな違和感、どこかハルが自分を偽っているように感じていて、
その事が悲しくて、「本当」を見せてもらえない自分はハルには必要ないんじゃないかと考えるのが嫌で……。
だったら最初から踏み込まなければいいと、自分の感情に気づかないふりをしていたんだと。
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