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通勤ラッシュの電車の中。
サラリーマンの群れに押し潰されながらも考えるのはハルのことで。
本当は一目惚れだったのに、男同士だからと自分にストップをかけて、近づくことを恐れていた。
ちゃんと知ろうともしてなかったのに、俺の知らないハルを垣間見る度に勝手に嫉妬して……。
まぁそのおかげで両想いになれたんだけど。
だからこれからはもっといっぱい話して、ふれ合ってお互いの知らないとこなんてないくらいに近づけたらいいのなぁって思う。
だけどいざ本人を目の前にするとうまくいかない。
俺が28年間積み上げてきたプライドは、俺が思っていたより高くなっていたらしく……。
甘い声で好きと言われたり
意外と力強い腕で抱き締められたり
……キスをされたり
恥ずかしいだけで嫌なわけじゃない。
むしろ……。
だけど素直になれない……。
いっそ強引に奪ってくれればいいのに……。
『次○○駅~お降りのお客様は足元にお気をつけてください。』
目的地に着いたことを告げるアナウンスに思考が現実に引き戻された。
どうしたらいいのかなんてわからない。
とにかく今は仕事に集中しよう。
「っし!頑張ろう。」
軽く気合いを入れて会社へと向かった。
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