139人が本棚に入れています
本棚に追加
風呂からでると、リビングのソファーで秋さんがテレビを見ていた。
髪の毛がまだ濡れている。
いつもならきれいに乾かしているのに……。
秋さんは俺に気付くと、そろりと上目遣いにこちらを見上げて
「髪の毛乾かして?」
と言った。
だぁぁぁぁあああっ!ふ
なんだこの殺人的な可愛さは!
俺をときめきで殺すつもりか!
やばいやはいやばい!
心の中で絶叫しつつ、平静を装って差し出されたドライヤーを受けとる。
秋さんの指通りのいい髪をすきながら、傷まないように優しく乾かす。
「熱くない?」
「ん、大丈夫。」
そんな何気ない会話をしながらも俺の心はパニック。
やっぱり何か悩んでるんじゃなかろうか。
いや、でも秋さんが言わないのをこっちから聞いても……。
でもでも、心配だし……。
うーん。甘えてくれるのは悪い変化じゃないし……。
どういう意図かわからないと迂闊に手が出せない。
それでなくても俺たちの関係はデリケートなのだ。ひとつひとつ慎重に動かなければあっという間に崩れてしまう。
秋さんが大切だからこそ、初めの一歩を見誤るわけにはいかないのだ。
だから今は我慢だ。
どんなに秋さんが可愛かろうが、きちんと秋さんの気持ちを伴った上でなければ。
秋さんはきっと俺から手を出さば流されてしまうから……。
それではだめなんだ。
秋さんが欲しいと思ってくれるまでは……。
そう決意した。
が、すぐにそれを後悔することになる。
この可愛らしいおねだりは1ヶ月以上続くことになるのだから……。
最初のコメントを投稿しよう!