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「仁科くん、それで話のつづきだが……。 」
「え?」
「仁科くんの恋人について聞かせてほしい。」
吉平さんに言われて、本田さんにハルのことを相談している途中だったことを思い出す。
「あぁ、その、えっと……。」
なんというか、美女二人に見つめられながら自分の恋人の話をするというのはいささか居心地が悪い。
二人の瞳が期待でキラキラと輝いているのだからなおさらだ。
しかし、ここでやっぱりもういいです、などと謂おうものならすさまじく落胆させてしまうのが目に見えているので話すしかない。
諦めにも似た心境で二人にハルのことを話した。
「ハル……俺の恋人と出会ったのはつい最近で、家の前に倒れてたのを拾ったのが始まりだった。それで……まぁ色々あってそういう仲になったんだけど…………。」
出会ったときからいままでを大まかに説明すると、吉平さんに盛大なため息をつかれた。
「有紗に聞いていた通りだな。思いが通じあっているのになにをそんなに遠慮する必要がある。」
「え?」
言われた意味がわからなくて本田さんの方をみるとぶんぶんとすごい勢いで頷かれた。
「まるで中学生みたいだな。付き合い方がウブで可愛い。」
「なっ……。」
まるで聖女のように微笑みながら言われてカァっと顔が赤くなるのがわかった。
「ともかく、素直になれる方法なんてありゃしないんだから、自分の欲求に忠実でいればいいと思うぞ。」
「そうですよ。恋人同士なんですから。じゃあもう行きますね。もっと自分に自信を持ってくださいね。」
そういって二人は食べ終えたトレーを持って立ち上がった。
時計は昼休み終了時刻の3分前を指していた。
慌てて弁当を片付けて仕事に戻る。
その日の午後は吉平さんと本田さんの言葉で頭がいっぱいだった。
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