心。

2/6
前へ
/19ページ
次へ
包み込まれると、余計に涙がでた。 知らないひとなのに。 出会って何分もたってない。 名前もしらない。 そんな彼が、あったかい。 頬に、彼のピアスが当たって、冷たいし痛い。 だけど、ずっとこのままでいたかった。 だけど、深みにハマりそうで怖い。 「も…大丈夫、です…」 「…そんなふうに見えないけど。」 どうして。 涙が止まらないんだろう。 初めて、女の子の言う、涙を出したり止めたりする技が羨ましくなった。 「名前は?」 「…ゆ、り」 うまく言えない。 口が動かない。 だけど、 「ゆうり?」 なんでこの人はわかるんだろう。 「俺、りょう。」 頭が痛くなってきた。 ダメだ、全部ゴチャゴチャ。 まぶたが落ちてきて。 眠くはないのに、眠った。 自分自身のことなのに、身体が疲れていて、悲鳴をあげていたのに気がつかなかった。 目を閉じる時。 君の温もりと、君の困った顔が脳裏に焼き付いた。 そこで、記憶がない。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加