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少しずつ慣れてきた気のする、駅のホーム。
僕が使う事なんてもうないと思った改札口。
小さいのに人がいないことはない、カフェ。
その道を辿れば、あの人のマンションについた。
ちょっと緊張しながら。
インターホンを押す。
記憶の端切れに残っていた号室を指でつなげていく。
歯切れの良い音が響いた。
「…ん」
低くて、やる気がなさそうな声。
これも、聞き慣れてきそう。
「あ、さっき電話した…」
「あ、ゆーり?」
ドアは開き、声も途絶えた。
そういえば、なにも持ってこなかった。
お世話になったから、お菓子くらい持ってきた方が礼儀として正しいのにな。
なんて、今更な考えを頭に浮かべながら、エレベーターに乗る。
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