第一章 物語は走りだし、主役は逃走する

8/15

758人が本棚に入れています
本棚に追加
/882ページ
 反対側へ出た理由は、2人組が表に居るのはもちろんだが、付け加えるなら他にもある。  まず、地図で示せばだが、一直線上に叔父宅があることだ。表の道は大通りで、見晴らしも良く、遠回りになってしまうので回避。  加えて、真っ直ぐ行くと商店街を突っ切ることになるのだが、そこまでの道が狭く入り組んでいるため、万が一、2人組に気付かれても撒くことは可能というわけだ。  撒こうとすれば、どちらにせよ遠回りになるのだが、この際気にはしない。  つまり、2人組に見つからず、見つかっても撒いて叔父宅へたどり着けば、作戦成功。反対に、見つかって撒けずに捕まった場合、失敗だ。  かくして、結城は地面を蹴り、走り出したのであった。    成功するだろう、自信をその身に纏って。 ――なのになぜ今追われているんだ?  結城は首を傾げた。完全に気付かれていなかったし、今も入り組んだ道を右、左と止まることなく走っている。  先程も言ったが、20メートルは離れており、何度か見失うはずなのだ。だが、長めの直線に入り後ろを向くと必ず後ろについて来ている。  その上、不自然である。長距離を走るためある程度のスピードは出しているが、ダッシュではない。本気で走れば追いつけるはずのスピードだ。  茶髪の男は自転車に乗っているため、なおさらである。やたらカッコいい、小回りのきくマウンテンバイク。  結城には、2人組がわざわざその距離を保っているようにも見えた。  何かあるのか。そう考えようとしたが、分かりそうにもないため走ることに専念する。
/882ページ

最初のコメントを投稿しよう!

758人が本棚に入れています
本棚に追加