第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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 九条の知識も参考程度だ。辞書を一度流し読みしてはいるが、そこまで理解して使ってはいない。理解が必要な時には辞書を捲る。  彼にとって、方陣式のためにできたような“括り”は、魔術の幅を狭める存在でもあるためだ。  といっても、よく調べるものは記憶してしまうのだが。  あれば使う。便利だから。九条にとってはそんなモノである。  九条はレジに向かいながら、通話に出る。 「はい」 [――城ノ内だ。九条キリヤか?]  通話機の向こうからは低く重々しい声。  派遣屋シリウス代表側近、いつでも表情を崩せずいつも怖がられる男、城ノ内。  因みに、“崩せず”というのがみそである。城ノ内自身がどう思っているか、ここまで言えば分かるだろう。 「そうです。どうかしましたか?」 [《異界の旅人》はどうしている。それから、いつここへ来るつもりか確認したい] 「ああ、もう聞いたんですね。彼は俺と一緒にバラナルに来てます。で、受け取りには午後ですかね、受付に顔を出す予定ですが」 [分かった。少し待て。……おぃ――]  城ノ内が通話機の向こうで会話をし始める。この場合、代表だろう。  九条は、レジに本を置く。店員が作業をし始める。  九条が通話をしているのを察してか、店員が無言で紙に書いた値段を見せ、参考書に掛けるカバーを指差す。  九条は金を出しながら手を振り、カバーの不要を伝える。 [――九条] 「あ、はい」  商品を受け取りながら、九条は返答し、「ありがとう」と声に出さずに口を動かし店員に挨拶をし、出口へと足を向けた。
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