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[正直な話、覇王様の推薦でも難しいそうだ]
でしょうね。出そうになった言葉を飲み込み次を待つ。それだけならば、かけてこないはずなのだ。
[取り敢えず会って決めたいらしい]
「……受け取りついでに連れて来い。そういうことですね?」
九条は本屋を出、服屋への一本道へと歩き出す。
[ああ。午前は会議が入っている。来る時間帯は変えなくて良い]
通話機の向こう、城ノ内の声が苦々しく言う。
代表はまた渋ったのか。九条は苦笑いを浮かべた。城ノ内の表情を、良くも悪くも崩すことができるのは代表しかいない。ある意味天才だ。
いや、天才的なのはそれだけではないのだが。
「分かりました。今日は予定が詰まっているので、その方が助かりますし……ん」
視界に人だかりが映る。
ユウトを待たせている場所ではないか。九条は歩くスピードを速める。
[どうした]
「ああ、なんだかうちの《異界の旅人》君が面倒事に巻き込まれているようで……切りま」
突然隣に現れた光に九条は目を細める。よく見ると方陣式。それは人だかりの中心へと向かい、その後を追うように、赤毛の少女が走って行った。
――【張波】の方陣式。
咄嗟に方陣式を読み、足を止める。
「……どうやら、俺のお仲間がらみですよ。大したことは無いでしょうが」
覚えているかわからないが、【張波】は一度オヤジの元へ行く際、狼をはじくために使っている。あの時はデコピンだったが、デコピン程度の衝撃を増幅するならば、方陣式は要らない。
つまり、どうやら彼女は手加減なしでいくようだ。
[……戦専生徒。いつものことだろう]
通話機の向こう、城ノ内が淡々と言う。
「羽崎が突っ込んで行きました。あの様子だと、一宮。多分そちらには報告は行かないですね」
[わかった。九条、お前に頼む。……時間だ。そろそろ切らせてもらう]
「ええ、ではま……切れてる」
だから、“冷たい”とか言われるのだ。九条は通話機をしまい、いつの間にやら散らばり始めた人だかりの中心へと向かった。
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