第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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――街中の主役―― 「本当に、とんでもない所に来たよな……」 「カッカァ(異世界だからなァ)」 「こっち来てから、俺はなんだかんだ異世界を満喫してる……気がする」 「アァ(ちげェねェ)」 「……良いのかねえ」 「カッカァァ?(イイんじゃねェの?)」 「早め慣れて知らなきゃ調べらんないんだけど……でもやっぱり、危機感というかなんかそういうのが全く芽生えない。つーか俺はそういう調査とか研究とかできるのかっていう話でさ。姉貴がアレだから、やらないことにはわからないんだけど……ああ、まじ不安になってきた……」 「ッカァカカ?!(ッてェ独り言かよ?!)」 「ぁでっ!!」  キリヤが人だかりに気づく少し前。  大通りと路地が交わる場所。人気のない路地側の壁にもたれ、買ったばかりの服に身を包み、紙袋を両腕に下げ、キリヤを待つのは結城ユウト。  さまざまな服で着飾った通行人の流れに目をやり、思考という名の独り言の最中、彼は左肩にとまる黒羽に頭をつつかれた。  結城は、つつかれた場所を擦りながら、放っておけばマイナスの方向に進んだであろう思考を中断する。  現在の服装は、ワイシャツにパーカー……にちかいもの、動きやすいパンツ。  店では、いつもの定番スタイルを何着かと、下着類。意外にもフレンドリーだった老父と黒羽に勧められるがままに、ジャケットやらハットやらを買うはめになった。  途中、老父に「お主、ふっつうじゃのお、服で変わるぞ」なんて嬉しそうに笑われた。  ほめられたのだろうが、複雑である。  日本と金の価値が近いようで、使いすぎたかもしれない。と結城は思う。  何だかんだでサービスしてもらった上で、60,000オークオーバー。サービス前は75,000を超えていた。  そもそも、値段が付いていなかった。それが不思議でならないのだが。 「カガグッカァカ(気まぐれに値段を決めるんだと)」  金持った嫌な奴には高くつけるらしいぜェ。と、黒羽は翼を広げ、首を振る。  さらっと結城の心を読み、カラスの姿で妙に人間じみた動きをする彼は、かなり奇妙である。  とにかく、値段も安くしてもらい、小物もつけてくれたということは、凄く得をしたというわけではある。
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