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「怪しいもの以外、貰った金はラッキーと思って、大切に使いきる。それが礼儀だって、姉貴が言ってた」
「貯金していいのは自分で稼いだ金だけよ」姉の言葉に、そうかもしれない、と納得はした。ただ、それを言われたのは、拾った100円玉を自動販売機に入れながら、しかも「拾った証拠は隠滅よ」と続けながら、だったのだが。
それに近いことを言われ続けていたため、どうも使わなければいけない気がしてきてしまう。
別に、それに忠実になる必要もない。
姉の考えである上に、肝心の姉はいないのだから。
結城は気づき、溜息をつく。
「カカッ!」
「ぁでっ!!」
黒羽にまたつつかれ、つつかれた場所を押さえる。
カラスは今度は休めることなく翼を動かし飛び、その足で結城の額を蹴り、それを庇うように出された腕をつつき、また蹴る。
「おい! 止めろって、なんだよ、いきなり!」
結城は、攻撃をし続ける黒羽にいう。
「カカッカーガ!」
「っうお! 今のあぶなっ! 俺に、当たるな、って!」
「カガッカッ……?」
「ん? どうした?」
突然、黒羽が言葉を切り一点を見つめ、攻撃をやめた。定位置である左肩にとまろうとする。
結城は顔を動かし、黒羽が見つめる方向へと視線を動かす。
顔に風がぶつかる。
一瞬、その風に細めた視界の隅に、黄色の残像が映る。
それは本当に一瞬で、故に反応することもできなかったのだ。
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