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「……演劇部も泣いて喜ぶよ」
これには、さすがの九条も苦笑いを浮かべる。が、一番率先してやりそうなのは間違えなく、この男。
「この前俺も感謝されたから、宣伝にはなっているんだろうね」
案の定、である。
「でェ。こいつのなんだったんだァ? 斬れたし」
“神社”とか“神より借る力”とか、わけわかんねえよ。黒羽は溜息をつく。
俺も気になった。結城はそう言おうとするも、遮られる。
「そうそう、それよ! あなた何者? 柾のあの見えない刀、人間は衝撃のようなものは受けるけど、斬れるはずがないの」
遮った羽崎は黒羽に詰め寄る。
と、掌と掌がぶつかる、軽く乾いた音がぱしんと響いた。
すぐに消えてしまうような音だったが、一宮を除く全員が、その音に動きを止め、その音源であるキリヤへと視線を移す。
「ま、結局くろぶの紛らわしい存在が悪い。ってことはわかった」
視線を集めたキリヤは軽々と一宮を肩に担ぎ、立ち上がる。
「各自聞きたいことはあるだろうけど、取り敢えず、家に行こう」
眉間にシワを寄せ、左耳のピアスに手をやり、風に目を細める彼の心境を予想する必要もあるまい。
「時間が惜しい」
言ったのだから。
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