第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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「……演劇部も泣いて喜ぶよ」  これには、さすがの九条も苦笑いを浮かべる。が、一番率先してやりそうなのは間違えなく、この男。 「この前俺も感謝されたから、宣伝にはなっているんだろうね」  案の定、である。 「でェ。こいつのなんだったんだァ? 斬れたし」  “神社”とか“神より借る力”とか、わけわかんねえよ。黒羽は溜息をつく。  俺も気になった。結城はそう言おうとするも、遮られる。 「そうそう、それよ! あなた何者? 柾のあの見えない刀、人間は衝撃のようなものは受けるけど、斬れるはずがないの」  遮った羽崎は黒羽に詰め寄る。  と、掌と掌がぶつかる、軽く乾いた音がぱしんと響いた。  すぐに消えてしまうような音だったが、一宮を除く全員が、その音に動きを止め、その音源であるキリヤへと視線を移す。 「ま、結局くろぶの紛らわしい存在が悪い。ってことはわかった」  視線を集めたキリヤは軽々と一宮を肩に担ぎ、立ち上がる。 「各自聞きたいことはあるだろうけど、取り敢えず、家に行こう」  眉間にシワを寄せ、左耳のピアスに手をやり、風に目を細める彼の心境を予想する必要もあるまい。 「時間が惜しい」  言ったのだから。 ******
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