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黒羽は乱暴に頭を掻き、溜息をついた。
「んだよ、変な顔でこっち見んな面倒くせェ。……つか、そりゃァ、神の遣いの話じゃねェよ、多分」
「なんでよ」
「なんでもだ。オレらは護衛はできねェ。したくてもな……色々と縛りがある。断ってるってことは契約してねェみたいだし? なおさらだ」
言われてみればそうなのだが、強制的に契約を、訳も分からない第三者に結ばされた――“例え断ったとしても契約済み”のイレギュラーの口から言われても説得力に欠ける。
「でも、決めつけは良くないでしょ? あなた、その本読んでないんだから」
羽崎が頬を膨らませる勢いで言う。
様になるなあ、と結城はぼんやりと思う。
「へーへー、そーでしたァ。そんなことより、だ」
面倒臭そうに手の甲を羽崎に向けて振り、無理やり話しを変える。
「こいつ、いつまで寝たふりしてんだよ」
黒羽が指をさした先には、テーブルに突っ伏すように座らされた、一宮柾である。
因みに、全員が気付いていたのだが、神の遣いの話辺りから起きていた。
「大方、勘違いに気付いて起きづらくなってるのよ。最初起きた時に素直に起きておけばいいのに」
羽崎は一宮の頭を小突く。
「うるせー。塩塗んなくても後悔してんだよ、おれは」
突っ伏したままの所為か、くぐもった声で一宮は言う。
「おォ、やっと観念したかァ」
黒羽は呆れながら、良いんだけどよォ、と呟き、続ける。
「で? お前なに?」
「なにって? 生まれるはオム、東の地カラン。宿すは神の気、名乗る性は一宮、名を柾。神社期待の跡取りとはおれのことビックリマーク×2つ……とか、言えばいいのか?」
未だ突っ伏したまま言う。いつ顔を上げる気だろうか。
というか、その台詞は元々準備していたのか。
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