第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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 黒羽は乱暴に頭を掻き、溜息をついた。 「んだよ、変な顔でこっち見んな面倒くせェ。……つか、そりゃァ、神の遣いの話じゃねェよ、多分」 「なんでよ」 「なんでもだ。オレらは護衛はできねェ。したくてもな……色々と縛りがある。断ってるってことは契約してねェみたいだし? なおさらだ」  言われてみればそうなのだが、強制的に契約を、訳も分からない第三者に結ばされた――“例え断ったとしても契約済み”のイレギュラーの口から言われても説得力に欠ける。 「でも、決めつけは良くないでしょ? あなた、その本読んでないんだから」  羽崎が頬を膨らませる勢いで言う。  様になるなあ、と結城はぼんやりと思う。 「へーへー、そーでしたァ。そんなことより、だ」  面倒臭そうに手の甲を羽崎に向けて振り、無理やり話しを変える。 「こいつ、いつまで寝たふりしてんだよ」  黒羽が指をさした先には、テーブルに突っ伏すように座らされた、一宮柾である。  因みに、全員が気付いていたのだが、神の遣いの話辺りから起きていた。 「大方、勘違いに気付いて起きづらくなってるのよ。最初起きた時に素直に起きておけばいいのに」  羽崎は一宮の頭を小突く。 「うるせー。塩塗んなくても後悔してんだよ、おれは」  突っ伏したままの所為か、くぐもった声で一宮は言う。 「おォ、やっと観念したかァ」  黒羽は呆れながら、良いんだけどよォ、と呟き、続ける。 「で? お前なに?」 「なにって? 生まれるはオム、東の地カラン。宿すは神の気、名乗る性は一宮、名を柾。神社期待の跡取りとはおれのことビックリマーク×2つ……とか、言えばいいのか?」  未だ突っ伏したまま言う。いつ顔を上げる気だろうか。  というか、その台詞は元々準備していたのか。
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