第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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「アレだ、魔法陣だ」 「方陣式よ」  自信ありげな黒羽の答えと違う回答を羽崎は述べる。 「んン……だそうだ」  黒羽は、居心地悪そうに頭を掻いた。 「方陣式って?」 「え? ……大きな魔法を使うときの補助。 “人間は、武具や方陣式なしに大きな魔法を使うのはまず無理”なの」  怪訝そうな表情を浮かべながらそういうと、羽崎は指先に光りを灯す。それは吸い込まれるように一瞬で消え、代わりに先程の様な模様が現れる。 「これに魔力を与えると、魔法が発生するの。意識して性質を与えないといけないんだけどね」 「性質?」  結城が聞けば、羽崎は「それも聞くの?」と言わんばかりに眉をひそめながらも、説明を続ける。 「簡単に言えばイメージよ。例えば、それは当たったら燃えるのか、斬れるのか、はたまた濡れるのか。方陣式を出す前のタイミングで与える。 さっきの光見えたでしょ? あれは“照らす”イメージだから、魔力を与えると……」  方陣式が光り輝き、歪み、大きな光りの珠へと姿を変えた。  結城は目を細める。 「でも例外もあるの。性質を与えなくても、【張波】は魔力と一緒に衝撃を与えたことで成り立ったでしょ?」 「あれ、冗談抜きで効くんだよな」  魔法を消す羽崎の横、一宮は苦笑いを浮かべた。 「ケチ男ォ。教えてねェじゃねェか」  ケチくせェなと黒羽が言えば、分かってないなと、キリヤが大げさなため息で答える。 「戦争時に使われた、攻撃に特化した代物なんだよ。便利だけど、通常使うにはまだコントロールが難しい」  今のままじゃまず無理だ。そう言うキリヤに結城は本を渡される。 「『BUNCH精選魔術総合書』……?」    青の厚い表紙に銀の文字。本自体はそこまで厚くないのだが、重厚感のあるものである。  少しめくる。図と要点のわかるように所々色を変えられた文字。  これなら読めそうだと、結城は少し息を吐く。  一度、屋敷に置いてあったものを手に取ったが、どうもダメで、どうしたものかと考えていたところだったのだ。 「屋敷の読みかけて、断念してたろ」  見透かしたように、キリヤは口角を上げて笑った。 「ああ……ありがとう」  だからなぜそこまで、把握できているのだ。  結城は感激しつつも、若干の違和感をそこに覚えてしまった。
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