第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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「疑問も解消したところで、部屋行くぞ。掃除する。一宮が普段、埃落としてるから、楽なはずだ」  キリヤが席を立つ。  続いて椅子から飛び降り、ニヤニヤと下賤な笑みを浮かべた黒羽が、立ち上がろうとした柾の肩に手を回す。 「まめだなァ。まあ、身長的にもまめッぽいし……、おめェ“まめ”な」 「え? あだ名? まじ? おれ初めてつけられた」  からかいのつもりだったのだろうが、柾からは喜びの声。 「え゛ェ……」  そうじゃねェよ。そう言う彼の狙った言動が正常に働くことはまたもない。  損な役回りである。 「そう言えば、家主に挨拶とかって……」 「え? キリヤさんよ」 「え、まじ?」  知らされていない事実に結城は驚く。 「ああ、良い響きだよな。不労所得って」 「……」 『働くの好きだけどさ、働かないときに安定してお金が発生するといいよね。土地がほしいな』  あの流離いのフリーター、飯田シュウの発言が、ふと浮かぶ。 「この親子わからん。いや、わかりたくない」
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