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「それは、ないわよ」
赤い髪を揺らして首を振り、断言するカナハ。
「否定はできねえけど、部屋から気配消えてないんだよなー」
紫の瞳をキリヤの部屋に向けながら、難しそうにうなる柾。
「一般科出とは聞いたけど、そんなにありえないことなのか? 独学でやってたって聞いたんだけど」
2人の反応に結城は戸惑う。明らかにキリヤに対してのイメージにズレがある。
この時点では、キリヤの実力がこの世界の一般なのかもしれないので、何とも言えないのも確か。
「独学でも……ねえ」
「九条さんは確かに強い。そもそも戦専に一般科の出で、入るなんて前例ねーし。ただ、あの人、人前で魔法使わないし、分かんないんだよなー」
柾の言葉に、そういえばバラナルに来てから使っていないことに結城は気づく。
キリヤのことについては、あまり下手なことを言わないほうが良いかもしれない。結城は眉をひそめた。
そして、先程から積極的に発言していた黒羽が口を閉じてにやけているのに気がつく。
定位置となりかけている椅子の背もたれに腰掛けて、結城の考えすぎかもしれないが、彼が下手に何か言うことを期待しているかのように。
つまり、言わないほうがいいということだ。
黒羽の行動での判断は的確かもしれないが、思慮深い、というより考え過ぎである。
口止めをされているわけでもないのだから。
「ユウト君、知ってそうよね」
「いやあ……俺もキリヤとは最近会ったばっかだしさ」
そんなわけで結城は、カナハの質問に曖昧に答えた。黒羽は舌打ち。
おい、使い魔。
「本当に知らないのね?」
「ああ、まあ、ね」
カナハの疑いの目。さてどう切り抜けようか、と内心で冷や汗をかいていたその時、その声は突然飛び込んできた。
「ところでさ、異世界ってどんな?」
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