第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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「ああ……は?」  予期せぬ場所への不意打ち。  別にこちらも口止めされていたわけではない。だが、まだ言っていないのは事実である。  それを何故。タイミングがいいとも言えない今、何故。  結城はぎこちなく、ニコニコ笑いながらこちらを見上げる一宮柾に、一度逸した目線を戻した。 「頭の打ちどころ、悪かったのかしら?」 「おいおィ……」  そんな事情を知らないカナハは首をかしげ、黒羽は、今バラしちゃつまらないじゃねェか、と頭を抱えた。  そこの使い魔、ちょっと待て。 「あれ、言っちゃいけないっぽかった?」  結城の混乱の元凶、柾は頬を掻きながら苦笑い。  彼は行動が直球である。 「いけないってわけじゃねェけどよォ。なんでわかった」 「んー勘。なんか、ユウトの気がここの空気に馴染んでない感じが……したのか?」 「いや、聞かれてもわからないからさ」  勘でそこまで分かられたら困る。というか、気って空気に馴染むのか。  気やら神やら魂やらの存在が、見える見えないは別として、ごく一般であることは何となく感じていた。だがやはり、感覚としては分からない。  だが柾のような存在は、また別なのだろう。  ここへ来てから無い経験である。 「ちょ、ちょっと待って。柾が言っていることが正しいの? それじゃ、ユウトくんって……」  カナハは戸惑いながら、結城を指差す。 「《異界の旅人》らしいです」  その後、キリヤが部屋から出てくるまで、結城は2人の質問攻撃に悩まされることとなる。 ******
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