第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

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 代表は目を瞑ったままだ。しかし、結城には、不思議なことに目が合っている感覚があった。  廊下と同じ。結城はそう感じた。  彼女が口を開く。 「お前が、覇王の推薦状にあった結城ユウトだな?」  その姿から発せられたとは思えない、強く鋭い声。やはり、先ほどの声は彼女から発せられたもので間違えないらしい。  結城は頷く。 「そうか、派遣屋シリウスへようこそ。私は代表のシルビアだ。このままですまない。目も足も使い物にならなくてな……。そしてコイツが」 「……城ノ内。代表側近をしている」  代表側近を名乗る男、城ノ内は一歩前へ出、軽く頭を下げる。 「城ノ内、お前の勝ちだな」  机に肘をつき、口角を上げ、唐突に代表は言った。 「……は?」  当然、わけのわからない結城は、城ノ内に顔を向けた。  城ノ内は無表情のままである。本当に表情が変わらない。ロボットのようだ。  結城がそんな感想を持っていると、代表がこらえるようにして笑い、口を開いた。 「いや、魔力当てたらどうなるかって話してたんだ。そしたら、コイツが『くしゃみしでもそうだ』って言うもんだからよ」 「俺は部屋が汚いという話をしていただけだ。予知をした覚えはない」 「……」  淡々と答えた城ノ内。代表は大袈裟に頭を抱え、ため息をつく。 「魔力を、当てる?」 「部屋に入ったとき、変な感じしなかったか? アレだよ。身構えてなきゃ、大概気絶するな」  一応、人前で気絶する、という最悪の事態は知らずに免れていたのである。くしゃみで。  ただの、くしゃみで。  結城は、くしゃみに感謝しつつ、勧められるがままに応接用のソファに腰を下ろした。
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