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「……で、隣にいるのは報告にあった使い魔で違いないな?」
代表はゆっくりと腕を組み、黒羽に顔を向けた。因みに、彼女は先ほどの椅子に座ったままである。
「あァ、黒羽だ」
黒羽が軽く答えると、代表は黒羽をジッと“見つめた”。その横で城ノ内の表情が一瞬曇る。
彼の気持ちは分からなくもない。黒羽の人型といえば、貫禄や迫力はあるといえど、見た目はせいぜい25,6歳、下手すればキリヤと変わらない。
それと対話するのは代表である。
図からすれば、礼儀のない若者と、盲目の貴婦人。心中複雑であろう。
「神に遣えし鳥獣……底なしだな。私も出会うのは初めてだ。敬意を払うべきか? なあ、城ノ内」
代表が若干興奮気味に言えば、城ノ内は目だけを彼女のほうへ動かし、一言。
「何を似合わないことを言っている」
「ひでーな」
軽く会話をする2人。すでに城ノ内の表情は無である。
感情をどこかに置いてきてしまったのでは? と思うほどの無表情っぷりである。
しかし、先ほどのように緩急はあるのか、主に代表であるシルビア関連で若干豊かになるようであった。
「でェ、代表さんよォ。アンタ本当に目ェ見えてねェの? さっき、ユウトが無言で頷いたの反応してたしよォ」
ああそれか。黒羽の質問に代表は眉を寄せ、唸りながら答える。
「感覚的なものもあるんだが……ある程度の力がつけばまあ、目に頼らずとも、な。相手の力とか息遣いとか、感じ取れるようになるさ。お前も城ノ内も、恐らく、九条もできるだろ」
「あァ、まァ」
「出来るがシルビア。残念ながら、お前ほどになる者は少ない」
城ノ内の言葉に代表は居心地悪そうに、「ヤメろ」と呟きながら座り直す。
「俺のことは、買いかぶり過ぎかと」
九条は冷静に、代表の発言を否定した。
「こいつ……。残念なことに私の見極めは衰えちゃいないんだ。けど、こいつはわけがわからん。黒羽、お前とは別の意味で底なしだ」
意味不明だ。代表はそう吐き、ふてくされたように唇を尖らせた。
美人がやるとさらに素晴らしいというか、可愛らしいというか。
「シルビア、話を進めないか?」
「わかったって……」
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