第一章 物語は走りだし、主役は逃走する

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――逃走の主役 Ⅱ――  結城は走っている。  好きで? そんなわけがない。  結城は後ろを振りかえる。今度は、馬が土煙をあげ結城を追っている。もちろん、背中に人を乗せて、だ。  ただこれは夢だ。そうでなければ、こちらが困る。  なぜと問われれば、理由は明白である。  結城が走るのは、舗装されていない幅の広い道、木造の低い建物が並び、砂っぽい街。  どこからどう見ても、何度も何度も見て昨日も見た西部劇の景色。そして、追ってくるのは馬に乗り、拳銃を構えた男たちときた。 というか、さっき森に逃げ込んだはずだし、馬から逃げれてるとかおかしいし、訳が分からん。  結城はイライラしながらそう思った。  だがそうなると、さっき2人組から逃げていたのも夢かもしれない。  そういう考えも出てきた。    なぜなら、一瞬、視界が茶褐色に霞んだ次の瞬間には馬に追われていたからだ。  2人組から逃げている最中に寝た覚えはない。  現実ならば、あり得ないにも程がある。全て夢ならば万事うまくいく。  結城はムスッとした顔のまま、導き出した自説にうんうんと頷く。  傍から見れば変人である。  気持ち的に随分楽になったところで、結城は重大なことに気付いた。 “男たちが馬に乗り拳銃を構えている” 「やっべえ……かも」  ゆゆしき事態である。夢ならば当たることは万に一つもなかろうが、例え夢でも撃たれて死ぬのはごめんである。  血とか、血とか、血とか。夢でも見たくない。  どうするか。無論、逃げるほかないのだが。  そうこうしているうちに、一つの音が辺りに響き渡る。  何かが弾けたような、高音。 「!!」
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