第六章 主役は町へ赴き、カラスが祓われそうになる

46/48
前へ
/882ページ
次へ
 1枚目の方陣式に魔力を注ぐ。すると、飾りも何もなかった紙のふちに模様が浮かび上がった。  それを見届け、結城は息をつく。  やはり、未だ魔力に慣れていない彼には、書類に必要な少量の魔力の捻出も重労働。 「わからない場所はないか」 「あ、はい」  結城が2枚目に取り掛かろうとすると、城ノ内が声をかけてきた。  先程のこともあり、いきなりだった為、結城は一瞬体をこわばらせ、ぎこちなく彼を見上げた。  そこにはやはり仏頂面の強面である。  城ノ内は静かに続けた。 「……1週間ほど手続きにはかかる。戦専の担任も1週間いない。だから1週間後、それまでに準備をしておけ。 わからなくなれば、気兼ねなく聞けばいい」 「……はい」  何か言われるものだと結城は勝手に思っていたのだが、そこに落ちてきたのは気遣うような言葉。  「色々言いはしたが、ここへ来たこと、歓迎する」  軽く結城の肩をたたき、城ノ内は代表の方へと向きを変えた。 「……ありがとうございます」 「アザーッす」  結城は戸惑いながらも礼を言い、続いて、黒羽も片手をあげて軽く言った。  城ノ内はそんな黒羽を見、眉間にわずかに皺を寄せ、一言。 「お前には言っていない」  後ろで、代表が腹を抱えて笑った。 「こえェ。つゥか、オレ嫌われる率たけェ。差別じゃねェ?」  黒羽は、苦笑いを浮かべた。  差別というよりも、当然の結果である。 「くろぶは存在がアレだからな」 「おィ」 「ああ、アレね」 「……ユウト」  オレに人権はねェのか。黒羽は悲しく呟いた。  人権もなにも、人ではない。
/882ページ

最初のコメントを投稿しよう!

758人が本棚に入れています
本棚に追加