第一章 物語は走りだし、主役は逃走する

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――洋館の英雄達――  三人の英雄は、久々に顔を会わせていた。  西洋を思わせるその部屋は、重厚な雰囲気をかもしだしている。 「……来る」 「そうね、来たわ」 「……そうだな」  その部屋よりも重い空気を吐き出しながら、英雄達は言葉を発する。 「そろそろ働くか、俺たちも」 「……大丈夫? あの時より怖い顔しているわ」  一際、重い空気を纏ったこの部屋の主は、問いかけられると、天井を見上げた。 「覚悟はしていた、そのための準備もした。 だが……大事な人を巻き込まなければならない恐怖は何年生きてもひとしおだね……」  黒塗りの天井はその悲しみに満ちた声を吸い込み、微かに軋んだ。 「……やはり辛いよ」  その声は部屋の空気に溶け込んで消えた。      優しき英雄の苦悩と共に。  物語は、奔走する。
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