第二章 主役は青年に助けられ、驚愕する

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 結城はポケットに意識を向ける。    先程目覚めた拍子に、斜めがけバッグの中から落ち、おもむろにポケットに突っ込んだ、ナイフが都合よく入っている。  これでもかというほど話題に上がる、流離のフリーター、飯田シュウから誕生日にもらった、持ち手が黒いスタイリッシュな物だ。  何も持ってないよりはマシかもしれない。  そう考え、取り出し握る。若干手が震えていることに気付く。  震えというモノは、意識すればするほど酷くなる。  現に、結城の足は地面を蹴りながらもがくがくと震え始めていた。  呼吸がうまくできない。筋肉がこわばり、走りがぎこちなくなる。 怖い。  そんな感情を、飲み込むように目をつぶり、喉を鳴らせば、つま先に衝撃。 「っあ……!」  いつの間にか宙に浮く体、右足の軽い痛みに、頭から血が引く音を結城は感じた。  簡潔に述べよう。躓いてこけている最中だ。  嫌な予感。咄嗟にナイフを握りながら体をひねれば、目前に狼。  全てがスローになる。  その中で、思考だけが無駄に働き、すぐさま脳内は恐怖に支配された。  狼は身をかがめ、大地を蹴り、身体を投げ出す。  その身体は、結城に一直線に向かう。  ナイフを構えるも、呆気なく砕かれ、その破片が結城の頬を切る。 「はあ?!かたっ……ヴッ!」
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