第二章 主役は青年に助けられ、驚愕する

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――困惑の主役―― 「――……ぅ……?」  結城は冷たい外気に重い目蓋を開けた。寝起きの体は寒さを敏感に感じ、内から震える。  地面に寝ていたせいかで右半身が痛いが、取り敢えず重たい体をゆっくりと起こす。 「……ッいて」    誤って左手をつき、痛みが走る。  痛みに顔をしかめながら、左腕に目をやる。パーカーの袖が捲り上げられ、真新しい白い包帯が手首から肘にかけて巻かれていた。  瞬時に狼に襲われた現実を思い出す。  先程のアレは、やはり現実だったらしい。  結城は一瞬蘇った恐怖に、顔を再度しかめる。  だが、じっとしているぶんには傷は痛まなかった。  狼の噛む力が思ったほど強くなかったか、特殊な薬でも塗ってくれたか。  どちらにせよ、助けてくれた人には感謝しなければならない。  結城は、血液不足で頭に膜がかかるような不思議な感覚に唸り、まだ重い目蓋を擦りながら辺りを見渡した。 「ぉお……」  視界に飛び込んでくるのは光。  そびえ立つ木々の隙間からこぼれ落ちる木漏れ日。  その光は優しく、包み込むように辺りを照らし、地面に模様を描く。  見渡す限り続く木々、結城の居る場所から離れた奥の景色は光の屈折からか、(みどり)のフィルムをかざした様に見え、神秘的な風景を作り出していた。  風は、葉の擦れる柔らかな音を耳に届ける。  驚くべきはその木々の大きさだ。  ただ目を動かしただけでは、一本の木が視界に収まりきらないだろう。  それほど大きく、それゆえ、目の前の景色は見たこともないほど、壮大だった。  結城は、思わず溜息をもらした。  純粋に、感動してしまったのだ。
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