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――起床の主役――
早朝。目蓋を薄く開けるがまだ外は薄暗く、開かれた窓から侵入してくる少し冷えた風が、頬を撫でる。
窓から見える薄く紫がかった暁の空が、ゆっくりと揺れる。
その揺れはまだ眠い頭には丁度が良いらしく、彼を再度眠りに誘う。
何か夢を見ていた気がした。
ただそれは、夢と呼ぶにはいささかリアルで、そこに流れる空気も、音もなにもかも、その場に自分がいたようで。
気のせいかもしれないが、“見た”のではなく“見せられた”ような感覚で。
そんな感覚があるのに、夢の内容は覚えていない。
なんだそれ。異世界に来て、感覚まで毒されたのか。
次第に彼の目に映る景色の揺れは大きくなる。左肩を下にして、眉をひそめて唸った。
テーブルの上に、昨夜やっていた課題が広がったまま放置されているのが映る。「起きたら続きをやらなければ」彼は思う。
右肩に微かな圧力を感じた。誰かに掴まれているらしい。
彼はそれを払うように身体の向きを変えた。
「お・は・よ?」
瞬間、映り込んだ黒い影。
「……」少しの沈黙。
「おはっ?!」のち、驚き。
結城ユウトは反射的に朝の挨拶を返しながら飛び起きた。「よう、ございます……」
再度閉じてしまいそうになる目蓋を擦って目を開く。
「やっぱりいいわあ」
視界の中には、ベッドに肩肘をつき、ニコニコと笑う半透明。
そして、透けるその人物ごしに、寝起きの彼より眠そうな重い目蓋の顔。
「……蓮?」
未だ働かない頭で、いつもと違う光景を認識する。
「ねえ、アタシは無視なの?」
最初の驚きの原因であるレーナが、膨れっ面で結城の顔を覗き込む。
「いや、蓮がいる方が驚きだったんで」
そう言って、結城はあくびをした。
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