第十章 主役は考え、少年は唸る

5/26
758人が本棚に入れています
本棚に追加
/882ページ
 レーナが居ることに驚くべきなのはわかる。  しかし、顔を合わせてからというもの、レーナは時折、寝起きの結城を疑似金縛り状態を作って驚かす、という彼からすれば素直に喜べない遊び--“金縛りごっこ”を仕掛けてくるようになった。  毎度毎度飽きずに驚きはするが、困ったことに、いつもの光景になりかけているのだ。  止められるものなら止めたい。  ただ現状、『入口であれば鍵がかかっていても入れる』らしい半ゴーストである彼女の侵入を防ぐ術はなく、ずるずるとそれを受け入れる形になってしまっている。  驚かないのも不可能。最終的に抱きついてくる、彼女の氷のような体温に慣れることはできない。  そもそも、10も離れた女性がやることではない。何度か説得を試みたが、レーナは「だからこそよう」と答えるわけで。  結城は小さくため息をついた。  それを見て何を思ったのか、奥菜蓮は頭を傾ける。 「邪魔なら、出ていく」 「いや、むしろいてほしい」  居なければ、確実に抱きついてくる。居ても無駄な気はするが。 「抱きつかれておいて、何も、しないのか」蓮も事情を知っているらしい。 「……しないっしょ、普通」  そんな関係じゃない。結城が言えば蓮は目を見開き、ゆっくりと口を開いた。 「ヘタレ、だな」  口調は穏やかながらも、結城に対して向けられた言葉には明確に、彼の傾向というべきか意思のようなものが含まれていて 「……肉食系ベジタリアン……?」  それを悟ってしまった結城は、呆然とし、その通りではあるが意味不明な言葉を口走った。
/882ページ

最初のコメントを投稿しよう!