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レーナは困ったようにくすくすと笑いながら、結城の首に腕を回す。
同時に冷気が頬をなでる。
「ほうら言ったでしょ? 蓮に手を出したら、シャレにならないの」
あーこわい。穏やかな声がする。
『キリは部屋に入れない上に、やっても無反応。柾はお札張ってる。蓮は……ね』
結城は何度目かに、他に金縛りごっこを仕掛けない理由を訊ねた時の反応を思い出す。『それに、ユウトくんはからかい甲斐があるからねえ』と続くのだが、まあそれはいいとして。
「……とにかく、蓮がいたから“金縛りごっこ”じゃないんですね」
朝早いうえに驚いたが、そこには感謝だ。結城は小さくうなづく。
レーナは自らの唇に指を当て、笑った。
「蓮も困ってたからねえ、ドアを透って内から鍵空けたげたの。それにしても、ユウトくん……」
したかった?
冷たい吐息と共に耳元で放たれた甘ったるい声が、耳から入り込む。
その色気のある音は一瞬彼の息を止め、妙な寒気と共に襲い掛かり、心臓をバタつかせ――
「――ッじゃない、レーナさん!!」
吐息の当たった場所に熱が集まるのを感じたものの、それをどうにか振り払い、レーナに咎めるような視線を向けた結城の横、
「あ、そうだ。ユート、絵ができた」
蓮が本来の用事を思い出した。
******
「絵って、なにもこんな朝じゃなくても……」
起きれないわけではないが、正直眠い時間帯だ。黒羽も起きていない。
「よねえ……さ。じゃあ、お休みい!」
夜型のレーナはこの時間から睡眠らしく、お休みと言いながらなぜか結城の頭を勢いよく撫で、ぐしゃぐしゃにする。
「やめてくださいよ……」
結城が髪を直しながら無表情を装って返せば、レーナは含んで笑う。
「目、覚めたでしょ?」
ウィンクをし、悪戯好きなお姉さんは部屋に去った。
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