第十章 主役は考え、少年は唸る

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 気を取り直し、結城は蓮の後に続いて階段を降りる。  その途中、蓮がぽつりと話し始める。 「今日は、用事があるから。だから、早いんだ」 「用事ってなんの?」 「族長に、会う」 「……緑の民?」  結城は蓮の反応を伺うように尋ねる。  『わけあって派遣屋に預けられた』の“わけ”をまだ理解していないのだ。  前に彼が訊ねた時の、蓮曰く「俺、“愛し子”だから、一緒に暮らすのは、難しい。だから、柾の父さんに、相談した」。  その後に訊いた、柾曰く「蓮の体質と緑の民の生活が合わなくて……うん」。  オム出身組の返答は抽象度が高いことは判った。 「うん。そう。俺の、大事な家族」 「そっか」  ただ、族長や親と定期的に会っている上、満面の笑みを浮かべて返すあたり、深刻な事情ではないのは確かである。  2人は階段を下り、廊下を進む。  因みに部屋割りは、1階にキリヤの部屋とキッチンとリビングと風呂、2階がカナハの部屋とレーナの部屋、3階が結城。  そして、中2階といっていいのか、中途半端な位置の中途半端に離れた場所にある一室が彼らの部屋。 「お邪魔しまーす……」  蓮に続いて部屋に入る。  すぐに目に飛び込んでくるのは、描いている途中のものから完成したものまで、大小様々、色も様々、ほとんどが絵。 「すげえな……」  しかし、何を描いているのかは、さっぱりわからない。  さて、そんな部屋の隅。その空間はまた別の空気が漂う。
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